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twice as much ain't twice as good

"悩み"をなくす方法

 最近、いろんなことに対して迷ったり悩んだりすることがなくなった。就活中、病んだようにウジウジ言っていたのがウソのようである。悩みがなくなったのは、漠然と"悩む"思考法から、解決に向けて"考える"ことができるようになったからだ。読書から自分が得た考え方のエッセンスを簡単に書き表してみる。

自分の小さな「箱」から脱出する方法

自分の小さな「箱」から脱出する方法

  • 作者: アービンジャーインスティチュート,金森重樹,冨永星
  • 出版社/メーカー: 大和書房
  • 発売日: 2006/10/19
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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  『箱』を読んだことは、人生が変わるような体験であった。愚痴ばかり漏らしていた自分の漠然とした不満の原因が、実は自己欺瞞にあったのだと思い知らされた。この経験は本当に大きかった。簡単に言えば、人間は自分のアイデンティティを守りたいがために、自身の自己認識にウソをついている。そのウソこそが、問題の責任を周囲や社会に押し付け、あなたの悩みを何十倍にも膨らませているのだ。

 悩みをなくすためには、身の回りに起こる出来事を"自責"として捉えることがスタート地点になる。後述する『話す技術・聞く技術』でも似たようなことが書かれているが、『箱』の方が物語仕立てなので、すんなり心に入ってくる。本書を読んだうえで『話す技術・聞く技術』を読めば、さらに対人関係が好転するに違いない。

ゼロ秒思考  頭がよくなる世界一シンプルなトレーニング

ゼロ秒思考 頭がよくなる世界一シンプルなトレーニング

 

  自己欺瞞の箱から抜け出したら、自分が"本当は"何を考えているのか、認識しなければならない。人間は感情を常にモニタリングできるわけではない。複雑に絡み合った自分の中のモヤモヤした感情が"悩み"として降りかかり、整理されることもないまま、視界に霞(かすみ)をかけてしまうのだ。そのままでは考えることなど出来るはずがない。

 それを解きほぐすプロセスこそ、言語化である。明瞭な日本語で、自分が何を考えているのか言葉にしていく過程を、この本では 「ゼロ秒思考」と呼んでいる。これが本当に効く。自分が何を考えているのか、どうして焦っているのか、きちんと言語化することで、考えるべきことに集中することができ、解決への第一歩になる。

考える技術・書く技術―問題解決力を伸ばすピラミッド原則

考える技術・書く技術―問題解決力を伸ばすピラミッド原則

 

  ただし、一言に言語化すると言っても簡単ではない。言葉にしたものが曖昧では意味がないからだ。ビジネス・ライティングの古典として読み継がれる『考える技術・書く技術』は、私たちが普段使っている言葉(=思考)の不明瞭さを厳しく指摘し、いかに文章を書き、考えるかを丁寧に教えてくれる。文字通り目から鱗が落ちる経験だった。

 『ゼロ秒思考』で出てきた項目を整理し、解決に向けて考えていくときに大きな一助となるのが、この本である。思考とは、つまるところ一続きの言葉に他ならない。言葉をいかに扱い、どのような順序で考えていけば物事は解決するのか。誰から習うこともなく私たちが当たり前にしている物の考え方を、きちんと整理してくれる一冊だ。

話す技術・聞く技術―交渉で最高の成果を引き出す「3つの会話」

話す技術・聞く技術―交渉で最高の成果を引き出す「3つの会話」

 

 ひとりで悩みがなくなれば良いのだが、多くの場合そうはいかない。私たちの悩みの多くは複雑な対人関係から生じており、自分の感情や思考がクリアになったところで解決するものではない。 誰かと向き合って問題を切り出すとき、『話す技術・聞く技術』が大いに役立つ。

 大袈裟な邦題がついているが、原題の"Difficult Conversations -How to Discuss What Matters Most-"が表すように、本書はビジネスにおける交渉というより、むしろ「コミュニケーション法」の本である。対人関係の奥に横たわる"What Matters Most"を感情的にならずに話し合い、生産的な解決を行う方法が丁寧に紹介されている。

 この本がスゴいのは、信じられないほど多くの会話を分析した結果がふんだんに使われているところ。長く連れ添ったパートナーに別れを切り出す場面や、家庭を険悪なムードに陥れる関係を修復する方法など、日々立ち向かうべき難しい局面における理想的なコミュニケーションを、"答え合わせ"する本なのである。

 私たちはみな、誰からも"正しい方法"を教わったことがないのに、「書く」「考える」「話す」「聞く」という日常の基本的な行為について、自分のやり方が正しく、他人のそれが間違っていると判断しがちである。これらの"技術"について、体系立てて学び直してみるのも悪くないのではないだろうか。

 自己欺瞞の『箱』から抜け出し、『ゼロ秒思考』で思考と感情を洗い出し、『考える技術・書く技術』で整理整頓して、『話す技術・聞く技術』で効果的に伝える。この四冊を読んで実践したら世界の見え方が大きく変わったし、自分の思考が"悩む"のではなく、常に"考えて解決する"という方向になった。心からオススメする四冊である。